YG(イールドギャップ)とは何か?
イールドギャップ(YG)は、不動産投資における重要な指標の一つです。
これは、物件の収益率(FCR)とローン定数(K%)の差を示しており、具体的に次の計算式で表されます。
FCR – K% = YG
※FCR=不動産所得(NOI)÷総投資額(物件価格+購入時諸費用) ⇒FCRの詳細はこちらから
※K%=年間返済金額÷不動産所得(NOI) ⇒K%の詳細はこちらから
具体例その1
例えば、下の物件を購入した場合を考えてみましょう。
キャッシュフロー(CF)ツリーを作成
上の物件を購入した場合、キャッシュフローの流れは以下の通りとなります。
【CFツリー】
- 満室家賃収入/年:700万円 (1億×表面利回7%)
- 95%稼働計算/年:665万円 (①×95%)
- 諸費用(Opex)/年:△140万円 (700万円×約20%)
- 純収益(NOI)/年:525万円 (②-③)
- 返済額(ADS)/年:△315万円 (金利1.2%・期間35年・融資額9,000万円)
- 税引前CF(BTCF)/年:209万円 (④⁻⑤)
まず、この場合のFCRは・・
525万円(不動産所得:NOI)÷10,580万円(総投資額)=5%
となります。
銀行と投資家への配分
今回の融資条件において、「融資割合:90%」「自己資金割合:10%」ということは、「銀行の取り分」と「投資家様の取り分」は以下のようになります。
※初めに、NOI:525万円の図
※「銀行」と「投資家様」の取分の図
以上の「銀行」と「投資家様」の取分の図から、銀行の取り分が大幅に上回っていることが分かりますが、金利1.2%・期間35年・融資割合90%(自己資金10%)で計算した年間返済金額は315万円です。
つまり銀行は、90%にあたる472.5万円の全てを求めないことが分かります。
上のように、グレー色で配色された部分が差(ギャップ)として生じましたが、これは「融資資割合90%」の借入金を「期間35年」で貸出す結果、金利1.2%分が各年へ分配される為に、年間返済額が315万円となり、472.5万円との差が生じたことを意味します。
そして、このグレー色の部分がイールドギャップ(YG)であり、YGは下の図のようになります。
そして、YG:157万円と、投資家取分52万円を合計すると209万円となり、税引前CF(BTCF)そのものになるのです。
【CFツリー】
- 満室家賃収入/年:700万円 (1億×表面利回7%)
- 95%稼働計算/年:665万円 (No1×95%)
- 諸費用(Opex)/年:△140万円 (700万円×約20%)
- 純収益(NOI)/年:525万円 (②-③)
- 返済額(ADS)/年:△315万円 (金利1.2%・期間35年・融資額9,000万円)
- 税引前CF(BTCF)/年:209万円 (④⁻⑤)
このように分析すると、イールドギャップ(YG)とは、金利と期間を鑑みてK%を低くして得られるボーナスのようなもので、金利を低く、期間を長く調整することで、このボーナス幅を広げることができます。
まとめ
YGに拘りすぎると売却を見据えた出口戦略が懸念されます。
というのも、YGを高くするためには、K%を抑えなければなりませんので、必然的に融資期間を長くしようとする意識が芽生えますが、融資の期間が長ければ長い程、残債の減りが遅くなり、売却利益が得られない、という状況が生じます。
よって、期間と金利のバランスを考慮しながら、また、FCRを上げる努力をしながら、賢い投資を選択するよう心掛ける必要があります。